虹の木

社会福祉士・介護福祉士・主任ケアマネージャー・終活ライフケアプランナー思ったこと・看取りケアパートナー思ったこと思ったこと、感じたことを書いていきます。

デイサービスの役割についての私の考え(コロナウイルスの感染防止の為にデイサービスを長期で休むことは、実はリスクもあるんです)

現在、コロナウイルスが蔓延して、全国の緊急事態宣言の発令が延期されました。


近日中に一部地域では緊急事態宣言の規制緩和とは言ってますが、この先どうなるのか不安な毎日です。

 

このようななかで、介護保険サービスの利用を自粛されている高齢者やご家族が多くなってきています。
私が担当しているかたも、デイサービスの利用を控えているかたが少なくありません。
この選択は、それぞれのご家庭が考えて判断することですから、それでいいと私は思っています。

 

ですが、『デイサービスを長く休むことはリスクもある』ということを、支援者は説明をしているのか?と個人的には心配もしています。

 


誤解をしないでいただきたいのですが、デイサービスを休むことを否定しているのではありません。家族を守るための選択として、正しい選択でもあります。
ですが、デイサービスを休むことでの『リスク』が、全くないわけではないのです。
その『リスク』もふまえておいていただきたいのです。


デイサービスは『家族が仕事をしている間に預ける場所』という役割だけではありません。
もちろん、『日中独りになる介護が必要な高齢者の安全確保』ということは、デイサービスの大きな役割のひとつです。
ですが、デイサービスには、他にも大切な役割が沢山あります。


デイサービス(通所介護)の主な役割(主なサービス内容)をあげてみると・・
① 他者との交流の機会の提供
② 低下した身体機能の向上
③ 運動の機会の提供
④ 栄養バランスがとれた食事の提供
認知症の予防や認知症進行の抑制の為に、利用中の活動を通して様々な刺激を受ける場所
⑥ 日中安全に安心して過ごせる場所の提供
等があります。

 


その為、デイサービスを長い期間利用しないと、次のようなことが起きる心配があります。

 

① 身体機能の低下
全世代に言えることではありますが、外出の機会が少なくなると、身体を動かす機会も少なくなります。それは運動不足につながります。
介護保険サービスを利用している高齢者の場合、デイサービスに通うことが身体を動かす機会にもなっている方も多いと思います。
また、デイサービスで機能訓練を受けて、歩く力や全身の筋力の現状の維持をしたり、少しでも良くしようとしている方も多いと思います。
デイサービスをやすむと、これらができなくなるということでもあります。そうなりますと、身体を動かしたり機能訓練や体操をする機会もほとんどなくなる為、体力や筋力や歩く力が落ちることに繋がる可能性があります。

 

② 社会との繋がりの切断
高齢者は近所に友人がいない(または少ない)方もいます。そのような方にとって、デイサービスは「おしゃべりをする」場所でもあり、同世代の方との交流をする大切な場所でもあります。
デイサービスを休むことで、デイサービスで親しくなった方と話をする機会を持てなくなり、また家族以外の方との接点がなくなってしまう方もいます。

 

③ 認知機能の低下
デイサービスに通い、様々な方とおしゃべりをして、機能訓練や体操などで身体を動かし、レクリエーションなどでいろいろ考えて頭を使うことは、認知症予防や認知症の進行を遅らせることにもつながっています。
デイサービスを利用することで、身体や脳に刺激を受けていた方が、デイサービスを長い期間休むと、身体にも脳にも刺激をうけなくなり、物忘れが多くなったり、認知症が進行してしまう可能性もあります。

 

④ 上記のことが起こることによる、家族の介護負担の増加

もし、身体機能や物忘れや認知症の進行が進んでしまうと、ご家族の介護の負担が増えてしまうことにつながりかねません。

 


そのために、コロナウイルス感染の心配を抱えながら、でも、体力が落ちないように、また刺激を受けることで認知症の進行を予防するために、あえてデイサービスの利用を続けている方もいます。

 


デイサービスを『休む』
デイサービスを『通い続ける』
『どちらの選択も正しい』と私は思っています。


これは、それぞれのご本人の状況、また、ご本人やご家族の置かれている環境や価値観によって選択が違ってくると私は思います。


そのため、私はケアマネとして、デイサービスを休んでいる方やそのご家族には次のような提案をさせていただいております。

 

① 可能な範囲で身体を動かしたり、歩く機会を持つ
    例)近所を散歩をするなど。
②認知機能低下を防ぐために、自宅でできる脳トレの提案
  例)簡単な計算ドリルを使って計算をする
   ※足し算はできるけど、引き算ができない方もいます
国語のドリルなどで字を書く
脳トレの本の中で本人ができそうなものに取り組んでもらう。
     ※脳トレの内容は、簡単なものから難しいものまであるので、
      本人がストレスにならないものを選ぶようにしていきます
ただし、戦前生まれのかたのなかには、戦後の混乱期に生活が苦しくて学校に通えず、基礎学力がつけらなかった方もいます。
ですから、簡単なドリルも文字を書くことも出来ない人がいますので、その点でも個々の学力や理解力の配慮は必要になります。

 


そして、私はケアマネとして、このようなときだからこそ、担当している高齢者の方(=ご本人)やそのご家族のご様子には気を付けていきたいと思っています。
例えば・・
①ご本人の変化(身体機能や認知機能の低下)に気を付ける。
介護保険サービス利用を控えていることで、ご家族が背負う介護負担によるストレスに気を付ける。
③ ご家族が担当ケアマネである私に相談しやすいように配慮する。

 


コロナウイルスの蔓延によって『通所介護(デイサービス)が担ってきた役割』というものを、改めて認識することになったというのは、正直複雑な心境でもあります。


そして、今日も、感染予防対策をとりながら高齢者の方を支援してくださっている、デイサービス、ヘルパーさん、訪問看護師さんなど、各サービス事業所のスタッフの方々に、改めて感謝です。